【中学生】おすすめSSTゲーム5選|人間関係の困りごとをゲームで解決

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公開日:  カテゴリー: SST

思春期真っただ中の中学生は、健常な子でも接するのが難しい年ごろです。発達障害を持つ中学生なら課題を感じる場面がさらに増えてもおかしくありません。

しかし支援員が課題をSSTで解決しようと考えても、中学生固有の特性によりアプローチに悩まされます。小学生までのように正攻法ではうまく進められず、SSTに限界を感じる人も多いのではないでしょうか。

その点、ゲームは中学生でも夢中になりやすいツールです。SSTにゲームを取り入れるとSSTに対する動機付けをしやすくなり、トレーニングが円滑に進み効果も期待できるようになります。

本記事では特別支援向け教材を作成する編集部がおすすめするゲームを、中学生特有の課題を踏まえつつ5つ紹介します。

預かっている子どもたちを思い浮かべながら、最後までご覧ください。きっと、子どもたちにぴったりのツールが見つかります。

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発達障害児が中学生で直面する3つの課題

発達障害児が中学生で直面する3つの課題

はじめに、発達障害の中学生が直面しやすい課題を3つ解説します。

  1. ①自意識が強まり、人間関係に困難を感じるようになる
  2. ②ルールにこだわりすぎ、周りから疎まれやすくなる
  3. ③好ましくない誘惑や勧誘に遭うシーンも増える

中学生ならではの特性や困難を理解し、必要なソーシャルスキルを明らかにしましょう。その上でつぎの章で紹介するゲームを見ると、どのゲームが活用できそうか具体的にイメージしやすくなるはずです。

関連記事:アスペルガー向けのソーシャルスキルトレーニングメソッド6選

①自意識が強まり、人間関係に困難を感じるようになる

思春期は、身体もこころも大きく成長する期間です。

とくに「周囲からの見られ方」を意識し始める点には気を配らなければなりません。アイデンティティの確立が始まり、「自分はこうだけど、他人は?」と周囲のなかの自分を認識するようになります。

一方で、発達障害を持つ子どものなかには自己理解や他者視点が弱いケースが見られます。良くいえばマイペース、別の言い方をすれば「鈍感」「ちょっと変わった子」と周りの友だちから扱われるタイプです。

周りから浮かない自分でいたいと考える友だちも増えるなか、変わり物のレッテルを貼られやすい発達障害児は友人関係づくりに困難を感じやすくなるでしょう。

男女の区別や恋愛・性、先輩後輩の上下関係など、小学校では無縁だった人間関係の悩みの登場も、課題を複雑化させる可能性があります。

②ルールにこだわりすぎ、周りから疎まれやすくなる

発達障害を持つ子どもには、ルールや規範に強いこだわりを持ち頑なに守ろうとするタイプがいます。

幼いころは「こだわりの強い子ね」で済んでいた気質が、中学生になると融通の利かなさとして裏目に出る場合があります。

中学生にとって代表的なルールである「校則」を考えてみましょう。

一般の中学生は適度な“ズルさ”を覚えはじめます。大人がいない場面では「別にいいよ」「誰もいないし」と柔軟に対応し周囲も許容します。

一方でルールにこだわる発達障害児は、大人が見ていない場面・同世代しかいない場面でも校則を徹底的に守りたがり、友だちにも同じ対応を強要します

場面に応じて適度に対応したい周囲と、ルールに固執する発達障害児とのあいだに軋轢が生まれ疎まれるおそれがあります。

③好ましくない誘惑や勧誘に遭うシーンも増える

中学生になると、小学生までと比べて交友関係が広がります。良い友だち関係ができる場合もあれば、好ましくない人間関係に巻き込まれる心配もあります。

年長者や良くない友人からカツアゲや飲酒・タバコ、無理なゲーム課金など、悪い誘惑を受ける可能性もゼロではないでしょう。

中学生にもなれば、好ましくない誘惑や勧誘をはっきり断る力が求められます。

しかし発達障害を持つ子どもは感情のコントロールや場面に応じたコミュニケーションを苦手とする人が多く、放っておくとトラブルに巻き込まれるおそれがあります。

関連記事:良好な友達関係を築くSSTの実施例|効果を高めるひと工夫も紹介

中学生には人間関係の困りごとを解決できるSST(ソーシャルスキルトレーニング)が大切

人間関係も行動範囲も広がる中学生には、「子どもが自分自身で困りごとを解決できる力」をつけられるSST(ソーシャルスキルトレーニング)が必要です。

小学生までのように、生活のすみずみまで支援員や親の目が届くわけではなくなるためです。

支援員は子どもが困難を感じる場面をできるだけ具体的に想定し、解決策を考え実践できるSSTに尽力しましょう。

また困ったときはいつでも相談できる場所、手を差し伸べてくれる場所としての安心感を与えておくかかわりも大切です。ほど良い距離感を保ちつつ、彼らの一番の味方として必要なサポートを与えていきましょう。

中学生のSSTにおすすめのカードゲーム・ボードゲーム5選

中学生のSSTにおすすめのカードゲーム・ボードゲーム5選

中学生のSST(ソーシャルスキルトレーニング)に活用できるゲームを5つ紹介します。

  1. ①「フレンドシップアドベンチャー」
  2. ②「サイコロジーゲーム 中学生セット
  3. ③「おしゃべりバトルカードゲーム ペチャリブレ」
  4. ④「子どもが思わず動きだす! ソーシャルスキルモンスター」
  5. ⑤「イロトカタチ」

中学生は難しい年ごろです。

直球で指導するよりも、ゲームを使って一緒に楽しみつつSSTを行ったほうが支援員のメッセージを素直に受け取ってくれる可能性があります。

ここではSST向けに開発されたゲームと一般向けの市販ゲームの両方を紹介しました。

市販のゲームは楽しむ目的で作られているため、子どもたちも没頭しやすく意外なトレーニング効果が期待できます。

①「フレンドシップアドベンチャー」

「フレンドシップアドベンチャー」は小学校高学年から中学生に向けて、SST用に開発されたボードゲームです。

発達障害の子どもたちが授業中や休み時間、クラブ活動・部活動などで直面する困りごとが具体的に盛り込まれている点が特徴です。

プレイヤーはルールにしたがって冒険を進めながら、困りごと・トラブルを解決するソーシャルスキルを自然と学びます。

学べるソーシャルスキルは以下の4つにカテゴリ分けされています。

  • ストレスマネジメント
  • *助けを求める
  • *アサーション(自己主張)
  • *対立解消

また、子どもたちが手にするカードには正解が書かれていません。子どもたち同士で相談しながら、場合によっては指導者がアドバイスしながらよりよい対処法を一緒に考えてみてください。

②「サイコロジーゲーム 中学生セット」

「サイコロジーゲーム」は、日本で初めて開発されたカウンセリング現場向けのボードゲームです。

中学生には中学生セット(12歳~16歳用)がおすすめですが、子どもたちの発達の度合いによっては小学生セット(5歳~13歳用)や一般向けセットを活用しても良いでしょう。

サイコロジーゲームはカードに書かれた質問に回答しながら、すごろくを進めるゲームです。

カードに対して答えるため、人と人との会話にありがちな「相手の質問に答えないといけない」心理的プレッシャーが少なくて済みます。

その結果、子どもたちも普段なら避ける話題や悩みごとに関しても話しやすい心理になり、自分の言葉で話せるようになります。

質問カードは全部で120枚です。指導者が子どもの状況やトレーニングのバランスを見て最適なカードを事前に選定して構いません。

「人との対話が苦手」「自由な発言が苦手」な子どもでも質問に答えやすく、子どもと指導者の相互理解が深まる効果も期待できます。

③「おしゃべりバトルカードゲーム ペチャリブレ」

「おしゃべりバトルカードゲーム ペチャリブレ」は出版大手である幻冬舎が手掛けるトークで戦うカードゲームです。

2022年2月時点で、3シリーズがリリースされています。

  • *ペチャリブレ
  • *ペチャリブレ 新装版
  • *ペチャリブレ ステージバトル編

プレイヤーに与えられるのは、キャラクターカード1枚とアイテム/特徴カード2枚です。1対1で、相手のキャラクターを負かすべく自分のキャラクターがいかに強いかを即興で言い合います。

勝負の判定は周囲でトークバトルを聞いていたほかのプレイヤーです。対戦中のプレイヤー以外もゲームに参加できるため、疎外感なくすべての子どもが常にゲームに参加している状態をつくりだせます。

発達障害の子どもたちが苦手としやすい「場面に応じて臨機応変に話す」「即興で対応する」スキルを、楽しみながら伸ばせるゲームです。

指導者もぜひプレイヤーとなり、子どもたちといっしょにバトルしてみてください。

④「子どもが思わず動きだす! ソーシャルスキルモンスター」

子どもが思わず動きだす! ソーシャルスキルモンスター

日ごろの指導場面にゲーム要素を取り入れたいときに活用できる書籍を紹介します。

「子どもが思わず動きだす! ソーシャルスキルモンスター」は、臨床心理学・特別支援教育を専門とする明星大学 小貫悟教授が監修した1冊です。

発達障害によって引き起こされる問題行動は「モンスター」が原因だと考え、どのようにアプローチしたらモンスターを退治できるか、子どもたちと一緒に考え攻略していくのが本書の主旨です。

問題行動に付けられた名前は思わず「あるある!」と声に出してしまうものばかり、子どもたちが面白がって関心をもってくれる工夫がされています。

◎ モンスターの例

  • ・注意されたときに怒りたくなるのは「おこりんご」のせい
  • ・悲しい気持ちが制御できずタスクを進められないのは「かなC(かなしい)」のせい
  • ・助けがほしいのに何もできないのは「モヤモヤン」のせい

教室に付録のポスターを貼り、子どもたちとモンスターを眺め話しをしてみましょう。トラブルが起きたときも「知らんプリンが出てるよ!」とユーモアを交えた忠告ができるようになり、指導現場のイライラ解消に役立つかもしれません。

⑤「イロトカタチ」

「イロトカタチ」はバンダイナムコが手掛けた、自由な発想で大人も子どもも一緒に楽しめるカードゲームです。

正解すると出題者と回答者の両者が得点できるルールのため、勝敗に執着心が強いタイプでも周囲と軋轢を産むことなくプレイできます。

「イロトカタチ」ルール

  • ・出題者はお題カードを引き、表現するお題を決める
  • ・単色のカード10枚を使い、色や形でお題を表現する
  • ・動かしたり、ヒントを出してもOK
  • ・ほかのプレイヤーがお題を当てる

お題は「おにぎり」「バナナ」などシンプルなものから、「ひなまつり」「相撲」など難度の高いものまで3つのレベルに分かれています。

ルール上はさいころを振って難度を決めますが、参加者に合わせて「きょうは『かんたん』でやろう」と柔軟に進めても構いません。


限られた枚数と色のカードでお題を表現するのは想像以上に頭を使います。自分の脳内にあるイメージを相手に的確に伝える表現力養成トレーニングに活用できます。

関連記事:【年代別】ソーシャルスキルトレーニング(SST)の例8選|手順も解説

中学生のSSTにはVR教材「Realize VR」の併用もおすすめ

中学生のSSTにはVR教材「Realize VR」の併用もおすすめ

ボードゲームやカードゲームとは異なるアプローチでSSTを実施できる「VRを使ったSST」を紹介します。

「同じゲームばかりでは子どもが飽きてしまいそうだ」「もっと子どもたちの課題にピンポイントで即したSSTをしたい」とお考えの方は、ぜひゲームとVRの併用を検討してみてください。

ゲームでは得られない没入感やトレーニング効果が得られます。

VRを使ったSSTとは

VRは、まるで目の前に本当にその光景が広がっているかのような現実感を抱かせる映像を視覚に投影します。限りなく実体験に近い体験が得られる特徴を活かし「映像なのにほぼ実体験」のトレーニングが可能になるのが、VRを使ったSSTです。

VRは視界360度を覆う専用ゴーグルを装着し、映像を視聴します。視界のすべてがVRとなるため世界に没入しやすく、集中しやすいのが特徴です。

トレーニング中に目や耳から入ってくる情報によって注意が散漫になりがちな発達障害の人に向いたトレーニング方法です。

中学生にVR教材がおすすめの理由

発達障害を持つ中学生の多くは、他人とのコミュニケーションに課題を抱えています。

SSTとはいえ対話や人とのかかわりにストレスを感じては、本来のトレーニング効果が得られないかもしれません。

VRによるSSTは一人で進められるため、他人とのコミュニケーションが不得手でも取り組める点がメリットです。

またトレーニングを行う相手は仮想世界におり、現実の人間関係とは無関係です。応対が上手くできなくても妙な目で見られる心配も、友人関係に影響を与える心配もありません。

自分の言葉で、自分のペースでトレーニングできる点も、VRによるSSTが思春期の難しさを抱える中学生におすすめの理由です。

「Realize VR」は日常生活に即した場面を300以上収録

VRを使ったSSTのなかでもイチ押しは「Realize VR」です。

Realize VRは、発達障害の人が日常で困難に直面しやすい場面を300以上収録しているためです。

300もの場面に対するSSTを、支援する人が手作業で準備しようとするとかなりの手間がかかります。しかしRealize VRなら、VRゴーグルを用意するだけで準備が完了します。

収録場面は学校内外や生活のさまざまなシーンのほか、会社での対応も含みます。中学卒業後に就労する場合に備え、実務的な振る舞いを学べる点も特徴です。

Realize VRの導入相談やお試しも随時承っています。見積もりのご相談も、こちらからお問い合わせください。

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まとめ

思春期を迎え、自己意識が強まり他人とのかかわり方が大人びてくる中学生には「中学生に合ったSST」の実践が大切です。

自我の成長にともない支援員や親の指導を聞き入れなくなるケースもある中学生には、ゲームをSSTに利用してみましょう。指導色より娯楽色が強いゲームなら、中学生も一緒に楽しみやすいはずです。

記事で紹介したゲーム以外にも、SSTに活用できる市販ゲームは数多くあります。指導する中学生はどのような課題を抱えているのかを見極め、特性にあったゲームを探してみてください。

もっと手軽に効果的なSSTを実践したい場合は、VRの導入もおすすめです。

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