SST研修で職場・スタッフの困りごとが解決できる!やり方や実践例

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公開日:  カテゴリー: SST

職場に一人でも「自分勝手に行動する」「極度に要領が悪い」「指示をすぐ忘れる」などの特性を持つスタッフがいると、本人も周囲も手を焼きます。

該当スタッフに対し上層部が何も対策しなければ、周囲のスタッフの不満がたまり職場環境は悪化するばかりです。

もし従来の指導やOJTで解決できない課題に困っていたら「SST研修」を検討してみてください。事態改善の糸口をみつけられる可能性があります。

本記事ではSST研修の概要や効果、実施方法を解説します。先にSST研修を行い、スタッフの問題行動改善に成功した企業の実例もまとめました。

病院・福祉施設・学校でのSST研修事例も紹介します。プロによる研修のやり方や着眼点は、企業でのSST研修にも活かしていただけます。最後にまとめた「できるだけコストを抑えて研修を実施できるツール」もぜひ取り入れてみてください。

きっと、職場の困りごとを解決できるヒントが見つかります。最後までご覧ください。

1.SST研修とは

SST研修とは

SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、発達障害や精神疾患、本人の特性により社会生活に困難を感じる人に対し、必要な社会スキルを身につける目的で実施します。

SST研修とは「SSTを行える人を養成する研修」の意味で使われる場合と、「研修の形態をとった病院や職場、学校などでのSST」の両方を意味します。

本記事ではSST研修を後者(病院・職場・学校などでSSTを実施する)の意味で用い、解説します。

関連記事:ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは?必要性や各シーンを想定した方法を解説

2.SSTにより職場適応が進むのはこんなタイプ

SSTにより職場適応が進むのはこんなタイプ

SSTは「社会で人とかかわりながら生きるのが苦手なタイプ」に向いた訓練です。

例えば

  • ・情緒が安定しない
  • ・自分の行動をコントロールできない
  • ・指示や会話の内容を理解できない
  • ・指示を聞いて適切な判断ができない
  • ・得意、不得意の差が大きい
  • ・人との気軽な雑談が苦手

のような特性があるタイプの人を対象としています。

職場にいるつぎのタイプにSSTを行うと、困難を解決できる可能性があります。

  • ・タスクやスケジュールの管理が苦手
  • ・手順を細かく指示してもらわないと作業できない
  • ・ルーティンの仕事にもマニュアルが必要
  • ・顧客の様子に応じた柔軟な対応が苦手
  • ・同じことを何度言っても覚えていられない

SSTは一人ひとりの困難に即した訓練メニューを組み立てます。具体的な場面を想定し訓練するため、学んだ内容をすぐ実践できる点が特徴です。

関連記事:社会に出るための技能訓練!障害を持つ大人向けのソーシャルスキルトレーニング

3.SST研修を実施する手順

SST研修の準備は、大きく3つのステップに分かれます。

研修をステップごとに行うだけでなく、研修内容を定着させるフォローも準備しましょう。「研修をやっただけ」「やりっぱなしで、あとは本人任せ」を防げます。

SST研修を行うまでの準備とフォローアップ計画を詳しく解説します。

3-1.対象者はどのような場面で困難を感じているか整理する

はじめに、SSTの対象となる人が抱える課題と具体的なシチュエーションを整理します。

【課題①】管理が苦手

具体例(シチュエーション)

  • ・スケジュールやタスク管理ができていない
  • ・いつも締切に間に合わない
  • ・やるべき仕事をうっかり忘れるミスが多い

【課題②】過集中/散漫

具体例(シチュエーション)

  • ・関心があることばかりに没入し、周りが見えなくなる
  • ・1つの仕事に集中しすぎ、ほかの業務を忘れる
  • ・周りからの刺激(視覚・聴覚情報)が気になりすぎる

【課題③】態度

具体例(シチュエーション)

  • ・ボーッとしていることが多く、怠けていると思われる
  • ・簡単なミスが直らず、やる気がないと思われる
  • ・何度作業手順を教えても覚えられず、無能だと思われる
  • ・言葉足らずの態度から、周囲に誤解される

「職場に適応できない」「仕事でミスが多い」人は、上記の困難を抱えている可能性があります。

3-2.SST研修で解決したい課題を決める

SST研修で解決したい課題を決める

対象者の課題が整理できたら、SST研修で解決したいテーマを決めます。

テーマの決め方には、2つの考え方があります。

①課題と研修を1対1で対応させる
(タスク管理のSST研修、注意散漫のSST研修 など)

②複数の課題を包括的に考え、まとめて解決できるSST研修を検討する(社会システムの理解、対人関係調整、生活管理 など)

対象者の課題に一定の傾向が見えた場合は、2の手法が向いています。

対象者の課題解決に緊急性があり、周囲からも「何とかしてくれ」との声が出ている場合は、1の手法で研修を行ったほうが即効性が期待できます。

もし複数のメンバーが同じ課題を抱えているならば、1回の研修で一緒にSSTを行ってもかまいません。

3-3.課題解決に最適なSST手法を選定する

SSTにはさまざまなやり方があります。課題や対象者の特性にあわせて、最適と思われるアプローチ法を選びましょう。

【SST手法①】ゲーム

ボードゲームやカードゲームを使います。「ルールを守る」「勝負の結果を受け入れる」「戦略的に考える」などのソーシャルスキルが養成できます。

職場の規律を理解できない人や、自己優位の意識が高く周囲と軋轢を生みやすい人に向いています。

【SST手法②】ディスカッション

テーマを設定し、話しあう場を設けます。「相手の意見に耳を傾ける」「自分の意見を整然と述べる」訓練になります。

一人で話しすぎる人、また周囲の話を聞けない人に向いています。

【SST手法③】ロールプレイ

具体的な場面を設定し、ふさわしい振る舞いを実際に演じながら学びます。対象者が抱える課題場面を直接的に扱えるため、学んだ内容を実践しやすい特徴があります。

実際のタスク管理や電話応対などを設定しても構いません。

【SST手法④】ワークシート

課題と解決までの道のりをワークシートにまとめ、一緒に考えを深める手法です。対象者本人が課題を客観的に俯瞰しやすく、冷静に思考できる特徴があります。

人間関係の作り方やコミュニケーションの取り方などの課題解決にも向いています。

また近年は、動画教材やVR(バーチャル・リアリティ)を使った教材も取り入れられています。

動画・VR教材はさまざまなシチュエーションが収録されているため、幅広い学びを手軽に得られる点がメリットです。

専用ゴーグルで視聴するVRは没入感が高く、注意散漫になりやすい人でも集中して取り組めます。

3-4.SST研修計画を立てる

解決したい課題とSST研修手法が決まったら、研修の実施計画を立てましょう。

最低限決めるべき項目は

  • ・日時
  • ・場所
  • ・参加メンバー

です。

対象者の上長や同僚へ、研修の主旨と参加できるよう協力して欲しい旨伝えておくと、対象者が心おきなく研修に参加できるでしょう。

当日は決めた計画に沿って、研修を進めます。

課題ができなくても叱らず、どうすればできるのかを一緒に考える姿勢を大切にしてください。

3-5.定期的にフォローアップをおこなう

定期的にフォローアップをおこなう

「会社で研修を受けたが、その日の夜には内容をすっかり忘れていた」経験は、多くの人が身に覚えがあるのではないでしょうか。

研修内容がいくら素晴らしくても、終了後に適切なフォローがなければ内容はすぐに忘れられてしまいます。研修後のフォローを定期的に行い、研修内容の定着と課題解決の進捗をチェックしましょう。

フォローアップのやり方の一例を紹介します。

  • ・研修の復習を主題にした面談を行う
  • ・定期的に面談・相談の場を設ける
  • ・研修官が職場に様子を見学に行き、研修内容をOJTで実施させる

また、対象者が困りごとを気軽に相談できる窓口の設置も検討しましょう。

上長や人事担当、親しい先輩などにいつでも相談して良いと伝えておくほか、産業医やかかりつけ医と連携し情報を適宜共有できる体制を整えておくのもおすすめです。

4.企業や病院、学校におけるSST研修の実施例

企業や病院、学校におけるSST研修の実施例

ほかの企業や病院、学校では、実際どのようにSST研修が実施されているのでしょうか。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構がまとめた「発達障害者のための職場改善好事例集」ほかの資料から、実例を紹介します。

事例の「良いな」と思う部分を抽出し、自社のSST研修に役立ててください。

4-1.大東コーポレートサービス株式会社 (東京都港区)

大東コーポレートサービス株式会社では、発達障害をもつ従業員により以下のトラブルが起きていました。

  • ・公共のマナーやルールが守られない
  • ・社会人らしからぬ勝手な振る舞いがトラブルにつながる

発達障害の特性である「マイルールへの固執」「場に応じた柔軟な対応が苦手」が裏目にでたパターンです。

そこで同社ではつぎの手法でSST研修を行い、発達障害スタッフの課題解決と周囲のスタッフとの円滑な関係構築を実現しました。

  • ・公共のマナーをロールプレイで習得
  • ・起きやすいトラブルへの対処法をシリーズとして編集
  • ・目標設定と達成、承認のサイクルを短いスパンで回し習慣の定着を促進

SST研修を通じ、周囲のスタッフが発達障害の考え方や思考の癖を理解できる相乗効果も得られています。

4-2.新潟ワコール縫製株式会社 (新潟県新潟市)

新潟ワコール縫製株式会社では、発達障害者に以下の課題を感じていました。

  • ・午後になると集中力が途切れる
  • ・職場を離れ、勝手に行動する

縫製機械が多い同社では「発達障害のスタッフがミシンのボタンを勝手に押す」ことがありました。こういった行動は危険につながりかねず周囲のスタッフからも迷惑がられていました。

以下の手法でSST研修を実施し、問題行動が抑制できたといいます。

  • *「目標達成シート」を用意し、作業量に対する意識を高める
  • *目標を達成した暁には「やりたい業務を担当させる」と約束し、目標に対するモチベーションを高める

また同社では、発達障害者支援センターをはじめとする専門機関にも助言を仰いでいます。専門家による面談を繰り返し、社外の人とのコミュニケーションも活性化したそうです。

4-3.東京海上ビジネスサポート株式会社大阪支社 (大阪府大阪市)

東京海上ビジネスサポート株式会社は発達障害者を多数雇用しており、300名以上の従業員のうち80名ほどが発達障害者です(2018年時点)。

障害者雇用に積極的な同社でも、職務遂行やコミュニケーション面で困難に直面しました。

  • ・連絡が伝わりにくい、徹底されない(暗黙知の共有が困難)
  • ・自分本位のコミュニケーションが多く、人事評価が難しい
  • ・業務外のことを職場に持ち込む

そこで同社は「発達障害者が理解しやすい」コミュニケーション手法を徹底的に実施します。

  • *連絡事項は手順を含めて細かく掲示
  • *全体連絡のあと、個別に連絡の理解度を確認
  • *業務振り返りシートを導入し客観評価の指標を共有

「見て理解できる」方法が奏功して伝達漏れや理解不十分な場面が減少し、円滑な業務遂行につながりました。

4-4.石川県立こころの病院(石川県かほく市)

石川県立こころの病院では、看護師・作業療法士・精神保健福祉士・臨床心理士などが参加するSST研修を行っています。

「気持ちをうまく伝えられずに誤解されやすい」「人間関係がしんどい」と感じる患者一人ひとりに寄り添い、患者自身の悩みを解決するアプローチを取り入れている点が特徴です。

またロールプレイでふさわしい振る舞い方を学んだあとは、実践してみるところまで病院がサポートします。SST研修による理解と実践がセットとなり、悩みの解決や課題克服が近づきます。

4-5.宿泊型自立訓練施設ひなた熱田(愛知県名古屋市)

宿泊型自立訓練施設ひなた熱田では、日本SST普及協会の認定講師である土屋徹さんがSST研修を実施しています。

土屋さんは精神科病院での看護職や精神保健福祉士専門学校の学科長などを歴任した、精神科分野のプロでもあります。

本人に関係する人(親や支援者、人事担当者など)に対するトレーニングを行う点が特徴です。「周囲の理解なしには課題の解決はありえない」との土屋さんの考えによります。

著書も多数あり、YouTubeでもセミナーが紹介されています。「周囲の理解をもっと得られれば」と悩む人は、ぜひチェックしてみてください。

4-6.京都府立城陽高等学校(京都府城陽市)

京都府立城陽高校は、新入生に対してSST研修を実施します。発達障害や困難を抱える生徒だけが対象なのではなく、全1年生が対象である点が特徴です。

誰もが抱く「新しい人間関係づくりへの不安」の解消を目的とし、感じの良いあいさつの仕方をロールプレイで学び、ゲームで相互理解を深めます。

また日々感じる緊張や不安を解消する手段として「マインドフルネス」も扱います。自分の内面と向きあう方法を知った生徒たちは、衝動を抑え適切な行動を選択できるようになります。

SSTは障害を持つ人だけのものではなく、円滑な社会生活を送りたいすべての人に役立つ研修だと教えてくれる事例です。

5.企業でのSST研修には実務場面豊富な「Realize VR」がおすすめ

企業でのSST研修には実務場面豊富な「Realize VR」がおすすめ企業でのSST研修導入には「人的リソースの確保」「時間」「予算」など、現実的な課題が立ちはだかります。

「1回だけの研修なら実施できそうだが、継続的な実施やフォローは難しい」ケースもあるでしょう。

現実問題を解決しつつSST研修を導入する方法として、VRによるSSTをご提案します。

5-1.SST研修にVR教材をおすすめする理由

VRはSST研修が抱える課題を一気に解決し、かつ実用性の高いツールです。

まず、必要な人的リソースが最小限で済みます。研修内容はVRに収録されているため、研修官が行うのは「対象者を集め、視聴を管理する」だけです。

手軽に実施できるメリットも見逃せません。大掛かりな会場準備は不要、対象者にVRゴーグルを装着してもらえば研修を始められます。

簡単に実施できるため、繰り返しの研修や復習も容易です。反復学習により、早期に効果が表れると期待できます。

5-2.実務場面を300以上収録!Realize VRとは

SST向けVR教材のなかでも、とくにおすすめは「Realize VR」です。

Realize VRは、発達障害者が困難を感じやすい「コミュニケーション」を中心に社会の実務場面を150以上収録しています。挨拶や電話応対、上司への相談から、実は発達障害者が困りやすい休憩中の雑談、期日の相談など、場面設定が具体的な点が特徴です。

どれも職場でよくあるシーンであり、対象者が自分ごとととらえて主体的に視聴できるよう工夫されています。

さらに専用ダッシュボード機能もついています。「対象者ごとにカリキュラムを作成」「研修の進捗管理」「成長記録の可視化」も可能です。

「職場の“困ったさん”を、なんとか戦力化したい」「スタッフ同士の軋轢をなくし、思いやりにあふれた職場をつくりたい」と願う方は、ぜひ一度Realize VRをお試しください。

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6.まとめ

SSTは、社会生活に必要なスキルを身につけさせる訓練です。医療機関や福祉施設、学校などでおこなわれていますが、企業でも人材育成や職場改善を目的として導入されています。

企業でSST研修を実施する場合は「誰に・どのような目的で・どの手法で」行うか、綿密に計画を立てましょう。対象者が研修に集中できるよう、職場に研修の主旨を伝え協力を求める気遣いも大切です。

もしSST研修を行える人材や時間的・コスト的制約がある場合は、VRによるSSTを検討してみてください。