⑤黒字の事業所の戦略は?

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公開日:  カテゴリー: 放課後デイ

近年、障がいを持つ児童・生徒が増加しており、放課後等デイサービスの需要が増しています。国が需要に対応するため、法改正と規制緩和を行い、様々な事業者の参入が可能となりました。

現在では、増大する市場へ次々と事業者の新規参入が続き、利用者や働き手の取り合いが発生しています。

競争の激しい市場の中で生き残るには、事業の「黒字化」が大前提です。利益をあげ、さらなる投資を行い、高品質なサービスを利用客に提供し続ける必要があります。

以下では黒字事業者と赤字事業者の戦略の違いについて解説します。事業を展開する上で、意識すべき点を認識し、安定的な経営に繋げましょう。

放課後等デイサービスの現状について

独立行政法人福祉医療機構の資料、「平成29年度 児童系障害福祉サービスの経営状況について」によれば、放課後等デイサービスの赤字施設割合は32.2%と、「事業者の約3割が赤字経営」となっています。理由としては、民間企業の新規参入が増え、利用客の取り合いが発生しているためです。

一方で、放デイ事業全体の収支差率※1は10%を超えるなど、業界全体としては儲かっています。つまり、一部の黒字事業者が特出して設けている現状があるのです。

※1収支差率={(事業収益+事業外収益+特別収益)‐(事業活動費用+事業外活動費用+特別費用)}÷(事業収益+事業外収益+特別収益)

第1表

※厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部.”令和2年障害福祉サービス等経営実態調査結果”. 及び厚生労働省老健局老人保健課. ”令和2年度介護事業経営実態調査結果”. 参照

では、黒字事業者はどのようにして収益を上げているのでしょうか。赤字経営の「負のスパイラル」に陥らないために、黒字事業者が行っている戦略を3点、解説していきます。

黒字の事業所の戦略➀:高い利用率の確保

独立行政法人福祉医療機構によって実施された「平成29年度 児童系障害福祉サービスの経営状況について」の資料によると、黒字の事業所と赤字の事業所では、定員規模に対する利用率が大きく異なります。

黒字の事業所が利用率87.1%なのに対し、赤字の事業所では69.5%。なんと、17.6ポイントも差があります。

第2表

この差は何によって生まれるのでしょうか?

私見ですが、「特色のある療育を提供できているか」は大きな分かれ目になっていると思います。

単に預かって遊ばせているだけの放デイと、運動療育やコミュニケーションの仕方を教えたり、その子に合わせた勉強を教えてくれる放デイ、保護者様の立場からすればどちらを選ぶかは明白です。

「他の事業所にはない特色」が利用率の差に表れているように思われます。

黒字の事業所の戦略②:一人当たりの単価を上げる

同調査によれば、赤字経営の事業所は、黒字経営の事業所に比べ800円程、一人当たりの単価が低い状況になっています。第3表放デイ事業では定員がある以上、収入を増やすためには一人当たりの単価を上げることが不可欠です。そして、放デイにおいて一人当たりの単価を上げるための必須の戦略としては「加算をとること」があげられます。

こちらをご覧ください。第4表指導員加配加算を受けている割合が、黒字の事業所は66.1%なのに対し、赤字の事業所では54.9%
また、関係機構連携加算を受けている割合が、黒字の事業所は10.1%なのに対し、赤字の事業所では6.1%となっています。

黒字の事業所は、積極的に指導員加配加算や関係機関連携加算を取っていることが分かりますね。

これらの加算を取れる事業所としていくことで、利用者の療育環境を整えるとともに、利用者一人当たりの単価を上げ、経営を安定させていくことができるようになります。

黒字の事業所の戦略③:人件費の削減

意外かもしれませんが、黒字の事業所の人件費は高くありません。

同調査によれば、赤字の事業所の一人当たりの人件費が3,174千円である一方、黒字の事業所では2,854千円となっています(もっとも、同調査は平成29年時点のものなので、令和1年10月に新設された特定処遇改善加算がある現在では、もっと人件費が増えている可能性があります。)。

支出に占める人件費の割合(人件費率)も大きく異なり、赤字の事業所が90.2%なのに対し、黒字の事業所の場合は63.4%です。第5表この結果には三つの意味が含まれていると思います。

1つ目は、赤字の事業所において、人件費を支える程の収益があげられていないこと。つまり、絶対的な売上の不足です。これは上述の戦略➀②を欠いているためだと思われます。

2つ目は、黒字の事業所において、的確な人員配置をしているということ。正規社員はもちろんですが、非正規社員においても専門性の高い人員を確保するとともに、その配置の時間帯(シフト)についても加算が採れるように工夫していることが考えられます。必要な人材を必要なだけ確保することで、余分な人件費がかからないようにしているのです。

3つ目は、単に黒字の事業所はケチ(笑)一人当たりの人件費が低いことから、労働力を買い叩いている可能性は否めません。しかし、そうであっても人が足りなくなっていないということは、理由があるかと思います。

例えば、
・経営が安定しており将来性がある
・研修などで自分のスキルアップが図れる
・人間関係が良い
・自分が行っている療養で、子供たちの様子が変わるなどやりがいがある
などです。

給料が低くても、それに見合うだけの何らかの価値がある職場であることが考えられます。

ただ、できることでしたら頑張ってくれている従業員の労働力を買い叩く、なんてことはしたくありませんよね。

「給料が安い」ことは離職率を上げる大きな要因の一つでもあります。それを避けるためには、収入を増やし、手厚い福利厚生や他事業者より高い給与設定、良い労働条件を確保することが必須になります。

しかし、だからといって放デイには定員がある以上、簡単に収入を上げることはできません。
放デイ事業だけでは頭打ちが決まっているのですから、収入を増やすためには放デイ以外にも新たな収入源が必要となります。

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